じゃのめ見聞録  No.60

   「鉄人28号」のゆくえ


2005.10.1



 アジア・太平洋ロボットコンテストというのが2002年から、NHK主催、文部科学省、日本機械学会、日本ロボット学会の後援で実施されている。6月に国内で大学対抗の予選があり、今年は8月に北京で行われ、東大が初優勝した。今年の中国では洪水があり、大会が延期されていた。そんな災害時に「ロボットの玉入れ競争」に興じていていいのか、という見方もあったみたいだが、別のニュースでは、災害救助用のロボットコンテストのあるのも偶然見た。そういうコンテストでは、「選手」たちは、小さな操縦器を必死で操りロボットを動かしていた。まるで「 鉄人28号」みたいだとその時私は思ったものだ。というのも、その頃、夜中のBSジャパンでアニメ『鉄人28号』が放映されていて、あまりにも懐かしかったので、ビデオにとって見ていたからだ。

 私がラジオ放送の『鉄人28号』を聞いたのは1959年で10歳の時だった。学校から帰ると、ラジオの前にかじりついて、このドラマを聞いていた。「うなる鉄腕すさまじく、玉も通さぬ鉄の胸・・」という主題歌は今でもちゃんと歌うことができる。今回のアニメ『鉄人28号』では、昭和30年代の町並みが忠実に描かれていて、それも懐かしかったが、それよりか、鉄人が「兵器」ではないかということを巡って裁判が開かれている物語の展開はもっと興味深かった。鉄人は災害救助のできるロボットなのか、それとも大量殺戮をするロボットなのか・・・。

 近年のイラク攻撃に使われたロボットミサイルから、彗星に激突していった探索ロボットロケットまでを見ていると、正太郎と操縦器と「 鉄人28号」の三つのテーマが、こうして何度でもリメイクされる理由がわかるような気がする。余談だが、来年は「 鉄人28号」が生まれて50周年らしく、約2年かけ24巻の漫画の完全版が出版されるらしい。見てみたい気もしている。
                                  京都新聞 2005.9.23