じゃのめ見聞録  No, 38

友だちを数えなさんな

  
2003.11.10

 「あなたの友だちは」と聞かれて、あいつと、あいつと、・・・と数えていって、いやあいつはそうじゃないだろう、こいつとはちとビミョウだな、なあんてなことを、考えてもいいんですかねえ。友だちって、数えられるんですかね。UFOみたいに未確認飛行物体やなと思いませんか。ぼくは、思うな。確認ができない。でも、ぼくにも友だちは「いる」んです。おかしなことにね。ぼくらには、他の人との共通性がかならずあるもんです。故郷が同じとか、高校が同じとか、阪神ファンとか・・そういう共通性があって、おしゃべりをしたり好意を持ったりできた人は、もうたいていは「友だち」です。友だちといっていいんです。でも、そこから「本当の友だち」なんてことを求め出すと、おかしなことになってしまいます。それは、もっと、もっと、いっぱいの共通性を相手に求めてしまうことになっているからです。いくら、友だちと共通性があるったって、そんなにいっぱいあるわけがないじゃないですか。勘違いですよ、「本当のともだち」なんていう観念は。少しずつもっている共通性を大事にすること、それがぼくらのできる精一杯の営みです。そういう努力をする中に、きっと幾人もの「友だち」があらわれてくるんでしょう。でも、そういう努力をする人は、きっと友だちを数えたりはしないと思うな。そんな人にはきっとケンカ友だちもいるんやろね。ケンカすることが共通性であるような人。あいつなら、ズバリと痛いところを突いてくる、とわかっている人。うらやましいね、そういう悪友のいる人は。
                     (同志社女子大学通信『ヴァイン32』)