自著のご紹介



『人間失格』の発見 ―倫理と論理のはざまから

大和書房 
1988年2月25日
 幼児期の不遇な母子関係、父子関係から、対人恐怖症的に育った太宰治。その自分の姿を亡くなる直前に『人間失格』という特異な言い方で主題化して作品にしたのだが、この特殊な個人的な体験が、日本の著者の多くの共感を呼んできた。それはなぜなのか。ここでは狭い意味の文学論としてではなく、とくに「対人恐怖的」に描かれた主人公の社会学的な状況を、日本人の置かれている状況として捉え直して、その現在的な主題を追求した。『富獄百景』や『桜桃』などの諸作品との関係にも言及。
―目次―
はしがき

T 『人間失格』を読む前に

U 『人間失格』の構造
一 「はしがき」あるいは「写真をみる」という仕組みへ
二 「第一の手記」
三 「第二の手記」
四 「第三の手記」

V 『人間失格』を読み終えて

W 作品の解釈史

補論 『人間失格』はいかに準備されてきたか

あとがき