自著のご紹介


「あなた」の哲学

講談社
 2010年1月20日

この本はおそらく日本ではじめての「あなた」論である。日本語で書かれた「あなた」についてのたぶん唯一の、十分に考えられた考察である。
くり返し述べてきたように、日本の思想史には、「あなた」についての考察はなかった。あるのは「わたし」論や、「他者」論ばかりだった。なぜ「あなた」についての考察がなかったのか。日本の思想界には、この「あなた」論がないことを不思議に思うことすらなかったのではないか。哲学や倫理学や社会学や精神医学の長い歴史のなかで、その学会誌に「あなた」がテーマになったことが一度もないことも奇妙だが、その「ない」こと自体に関心が向けられてこなかったことも妙なことだった。――「あとがき」より


―目次―

序 章 「あなた」と「他者」

第一章 "三世代存在"としての「あなた」
 1 ある違和感ー上野千鶴子『おひとりさまの老後』を読んで
 2 「あなた」を見つけるー森崎和江の軌跡
 3 存在の三重性
 4 「すがた」への敬意
 5 『ツァラトゥストラ』における「あなた」

第二章 「人称」の世界へ
 1 「あなた」は単なる二人称なのか
 2 日本語の「人称」
 3 『坊っちゃん』を読みなおすと
 4 「格付け」のなかで
 5 こころの傷と「あなた」

第三章 飢えと老いのなかの「あなた」
 1 千二百年の時空を超えて
 2 『池袋・母子餓死日記』考
 3 「そうかもしれない」の光景
 4 「小さな神さま」の発見

第四章 ブーバー、レヴィナス、そして西田幾多郎
 1 『我と汝』をめぐってー「汝」はなぜ「あなた」と訳されないのか
 2 レヴィナスのブーバー批判
 3 「きみ」と「あなた」のあいだ
 4 西田幾多郎の「私と汝」

終 章 「あなた」の方へ

あとがき