自著のご紹介


自閉症―これまでの見解に異議あり!

筑摩書房
 2006年7月10日

自閉症児の特徴は、「変化への抵抗」「同一性の保持」という点にみられる。数、暦、地図の発見は人類が作り出した三大叡智であるが、「順序」や「配列」が損なわれるとき、人は誰でもある程度のパニック状態になる。自閉症児の「おそれ」の根には、こうしたメカニズムが働いていることがみて取れる。彼らとわれわれは決して断絶しているのではなく、むしろ同じ地平に立っている。これまでの自閉症=特殊論に異議を唱え、この生のあり方が誰にも共感でき、理解できるものであることを主張する。
―目次―

第1章 自閉症のはじまり

家族のとまどい
変化に対する抵抗
「おくれ」と診断名
「報道特集・うちの子は自閉症」を見て
「かねやん」の絵カード
「TEACCHプログラム」への疑問
「おくれ」をもつ他の人たちも
「並んでいるもの」への気づき



第2章 自閉症以前の問題

「並んでいるもの」の思想を発見する
「自閉症」の問題と「並んでいるもの」の関係
人類の三つの「偉大な知恵」
並びとしての数(序数)
なぜ「序数」が「偉大な知恵」なのか
順序・順番の意味
「暦」とは何か
空間的・時間的な位置を知ること
「折り返しの数」の意識
序数のまとまりから「暦」へ
「並んでいるもの」の仕組み
「規則性」への気づき
「症状」としてしか見てこなかった研究者
駅や地図にこだわる人たち
地図とは何か
「目印」と「順番」
「目印」の「配置」が「地図」である
人への不安
「人の動き」は予測しにくい
「言葉のおくれ」と言葉の不自然な使い方
「出題のスタイル」の規則性
「記憶」の法則
「記憶力」と「記憶術」



第3章 これまでの「自閉症論」批判

1.Kちゃんとの小旅行
2.「自閉症」の記憶術を見なおす
3.医者・研究者の思いこみ
4.「関数」という知恵について
5.映画 『レインマン』 に何を見るのか
6.孤高の大著―小澤勲 『自閉症とは何か』



第4章 「放浪」とは何か

今なぜ「山下清」をとりあげるのか
けんかとナイフ
「花火の貼り絵」の意味
「幾何学模様」と「人間」
日記の特徴
人名の覚え方
「地図」への関心
「放浪」は放浪ではなかった
「性」への関心
「やらせ」もあったのでは?
「性的な関心」=「性的な犯罪」ではない



第5章 自閉症裁判

「浅草レッサーパンダ事件」
背後にある凄絶な人生模様
「ケース記録」か「生活史」か
教師側の「自閉性」
「加害者」の生活史
広い行動範囲
「ふらふらとあちこち行った」のか?
「広範囲」がそのまま「犯罪」につながるわけではない
「加害者」は「自閉症」か?
弁護側の「自閉症」へのこだわり
「知的なおくれ」の地学的見解へ


終 章 「おくれ」とは何か

「日々のくらし」と「文明・文化」の創出
二通りの「おくれ」
「おくれ」は文明の成果
くらしのリズムと関係の中の「ふつう」

あとがき