自著のご紹介



恐怖とは何か 

宝島社 
1992年8月1日
 恐怖の源は死である。死といっても三つの死がある。生理の死、倫理の死、論理の死。病気や障害は生理の死、罪人の烙印は倫理の死、考え方の行き詰まりは論理の死を招く。そして次元の違うそれぞれの死に、性質の異なる恐怖が発生する。この三つの死は「共同体」から閉め出される時に集中的に現れる。古今の民間習俗や物語に現れた鬼や魔物の恐怖は、共同体に帰属できなかった人々の恨みと関係する。人間と共同体の関係を恐怖という主題を基に、宗教の観念も含めて考察し直す。ポーの恐怖小説も分析。
―目次―
はじめに

T 何を恐れてきたのか
 1 一枚の恐怖の写真
 2 共同体を出るところ
 3 鬼―この恐怖の化身
 4 「鬼」から「よそ者」へ
 5 「よそ者」から「他者」へ
 6 都市生活者
 7 「所」とは何か

U 対人恐怖の世界へ
 1 「恥ずかしさ」とは何か
 2 赤面恐怖について
 3 「失敗論」をつくる中から
 4 対人恐怖者の「強気」について
 5 精神病理としての恐怖症について

V 文学に描かれた恐怖
 1 詩集『天の鐘』から
 2 『アッシャー館の崩壊』(ポー)
 3 『メエルシュトレエムに呑まれて』(ポー)
 4 『おそれとおののき』(キルケゴール)
 5 『皮膚と心』『人間失格』(太宰治)

付 子どもの「おびえ」「こわがり」について

あとがき