児童文学はどこまで闇を描けるか 宝島社 1992年3月1日 |
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『赤ずきん』の主題は子どもが狼に食べられるところにある。生き物を食べないと生きられない私たちの存在のあり方は、作品として描かれていると、おぞましく、恐怖に満ちたものとなる。そういう主題はふだんは表沙汰にはされず、「闇」になっている。児童文学の分野でその「闇」と精力的に取り組んだ上野瞭の諸作品を分析し、私たちが見て見ぬ振りをしている肉や血としての存在の仕方を追求した。『ガリバー旅行記』『不思議の国のアリス』の抱える主題との共通性にも言及している。 |
―目次― |
まえがき T児童文学の「闇」 1『赤ずきん』の闇 2『青ひげ』の闇 3宮沢賢治の『ブランドン農学校の豚』の闇 4スウィフトの『ガリヴァー旅行記』の闇 5キャロルの『不思議の国のアリス』の闇 U 「児童文学」への一視点 1子ども時代の「三界論」から 2大人から見られた三つの世界 3「作者」の仕事 4「謎」と「探偵」について 5上野瞭の作品への基本的な視点 6作風についてのいくつかのメモ V 上野瞭の作品論 1『ちょんまげ手まり歌』、刀 2『目こぼし歌こぼレ、、 3『日本宝島』、〃 4『ひげよ、さらば』 5『さらば、おやじどの』 6『砂の上のロビンソン』 7『アリスの穴の中で』 W 私の課題の方へ 1「種になる」イメージをめぐって 2老いと性 あとがき |